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季刊誌 駒木野 No.177

季刊誌 2017.08.30

当院の作業療法科が管理する畑に咲いた水菜の花

新年度を迎えて

院 長 菊本 弘次

小仏川沿いの桜が色づくと、ぼんやりとしていた高尾の山影があっという間に緑を濃くしていきます。多くの新入職員を迎え入れて、駒木野病院の平成28年度が始まりました。診療報酬改定は医療機関にとって常に重大な事項でありますが、今回の改定は30年問題への対応、地域医療構想の進展、さらには次回の医療法改正に向かうロードマップの通過点です。大きなうねりの中で駒木野病院はどうあるべきかが問われています。

私自身は、当院の持ち味あるいは強みを明確に認識し、それらの機能を十分に発揮すること、また、その認識を病院内に留めるのではなく、必要としている皆様、そして地域の皆様に、きちんとご理解していただく努力を怠らないことにあると考えます。当院は「心のこもった質の高い精神医療」を運営理念として、地域のニーズに応えるべく意欲的に事業展開してきました。例えば、平成24年から開設した児童精神科病棟は、貴重な医療資源として多様な分野や機関からのご期待や連携を頂戴しています。実際、当院への就職希望者の多くから「子どもの精神科医療に携わりたい」を口にされます。アルコール総合医療センターの立ち上げは、確実に利用者層を広げ、利用者サービスの向上をもたらしました。更には企業の健康対策への糸口として機能することで、なお高いとされている精神科病院の敷居を一段ずつですが低くしています。

上記の活動に比較すれば地味に映るかもしれませんが、駒木野病院の真骨頂ともいえる取り組みは長期入院患者の退院促進・社会参加支援にあります。とりわけ最近の成果は目を見張るものがあります。粘り強くそして戦略的な働きかけは、不可能とも諦めかけていた利用者においても、自然と実が熟すように退院に結び付けています。実現を可能にしたのは、優秀な担当スタッフの存在とその能力を最大限に発揮するためチーム医療の実践です。無論、昨今における地域環境の成熟抜きには語れない成果ですが、地域をその気にさせる、地域をチームの一員として協働していく姿勢あっての成果です。

駒木野病院は、平成28年度も、地域に愛され信頼される病院として努力を惜しみません。

サービスステーション駒木野 活動実績(2016.1-3)

1月
【地域連携】
22日(金)包括医師相談(田Dr)
23日(土)日野市社協の若年性認知症講演会(山口)
27日(水)病院見学会・かわせみの家職員・関係者勉強会(渡辺Dr)
29日(金)包括出張相談会セミナー、地域での支援事例をケアマネさんから報告していただきグループ討議。包括・ケアマネ・当院職員・地域の方で90名余りの参加。
【本人・家族支援】
9日(土)ファミリープログラム➃
16日(土)友遊会(新年会)
22日(金)「ビーイングスペース萌」説明会(パンの販売、事業所紹介、働いている人のお話個別相談など)
22日(金)包括医師相談(田Dr)
23日(土)サポートグループ

2月
【地域連携】
17日(水)東海大学医療相談室との勉強会(経営企画室二瓶、ワーカー室メンバーと山口参加)
19日(金)八王子西部在宅医療研究会(山口)、CPTネットワーク会議(東海大学病院で開催、岡野PSW、山口参加)
25日(木)病院見学会
26日(金)包括医師相談(森山Dr)
【本人・家族支援】
5日(金)いっぽの会茶話会
13日(土)ファミリープログラム➄
18日(金)「自分らしく生きていこう」クッキングハウスの仲間たち講演会:グリーンホール
19日(金)いっぽの会茶話会

3月
【地域連携】
1日(月)落合町会で認知症予防の健康教室(長谷川PT,相川PSW ,山口)
2日(水)多摩立川保健所地域精神保健福祉連携専門部会(山口)
7日(月)はちせい地域交流集会(山口)
18日(金)包括寺田・めじろ主催地域ケア会議(竹内PSW)
23日(水)病院見学会&キャラバン隊(C2芝山Ns、高野OT、古明地PSW,山口)
28日(月)包括医師相談(田Dr)
【本人・家族支援】
4日(金)いっぽの会茶話会
12日(土)本人・家族対象のうつ病講座(田Dr)
18日(金)いっぽの会茶話会
19日(土)友遊会
26日(土)サポートグループ
【その他】
多摩の心理教育を行っている医療機関の交流会への参加や、ファミリープログラム、てくてくなどの振り返りと来年度に向けての話し合い、病院全体の心理教育についての話し合いなど。

新人紹介

平成28年度入職式 新しい仲間を迎えて

理事・事務長 神 マチ

この自然豊かな高尾山麓に春の躍動が漲る候、25名の新入職員をお迎えする事が出来、喜びと期待感でいっぱいです。

当法人は、この地で64年間医業を営んできましたが、現活動の始まりは昭和44年5月1日からであると考えられています。存続が危ぶまれた病院が今日の医療活動に到達し、いまなお質の高い精神科医療を求めてやまない理由と価値については駒木野病院の記念誌からも読み取る事が出来ますので、是非一度お目通し下さい。当法人はこの47年間、何時の時代も患者中心、チーム医療、地域との共生を目指してチャレンジしてきました。言い伝えられた言葉ですが「民間の病院が良心的に、技術的に、また経営的に可能な限りの医療サービスはこれであり、これ以上はできないと言い切れる病院」への道を今もなお歩み続けています。行く先々には予測もつかない事もあるかと思いますが、共に働く仲間を信じ、チームの一員として活躍されることを祈願しております。

看護師 朝倉 佳菜
自分は、精神疾患を抱えている患者さんの思いを受け止めて、再び地域に戻って生活できるように支援したいと思っています。そのためには、病棟看護師として患者さんの状態を精神的側面だけでなく、身体的、社会的側面にも着目して理解していかなければいけません。新入職者研修を受けて、専門職である看護師として責任を持って働かなければいけないことを改めて強く感じました。また、精神看護についてはもちろんのこと、精神科の薬物治療や退院支援について他部署の方々からもお話を頂きました。この研修を通して、多職種理解が深まったとともに、看護師としての役割を再認識することができました。今回の研修をもとに、病棟看護師一年目として患者さんに誠意をもって接し、多くの気づきを大切にして日々精進していきたいと思います。

看護師 畑 絢子
今回の新入職者研修を通して、自分の中で駒木野病院の職員として、そして看護師の一人として自覚が強まりました。初日に、名札とともに鍵を渡されたとき、いよいよなのだと思ったことを覚えています。それからの研修では、本当に様々なことを考えさせられました。社会人、看護師とは何なのか、自分の個性は何か、同期の人たちはどうような個性を持っているのか、患者様と関わる上での責任や役割等、このようなことを各専門職の先輩方からの講義を受けさせていただきながら考えを深めていきました。正直、不安な気持ちでいっぱいですが、暖かく応援していただける恵まれた環境に感謝しながら緊張して萎縮するのではなく、気づきや学びを楽しみながら、これから待ち受ける壁にぶつかり乗り越えていきたいです。とても意義深い研修をありがとうございました。

未来に向けた提言 責任者会議2015

当法人の魅力と今後の診療体制

[当法人の魅力]アクティブな風土、職種間の連携が良い、豊富な人材
[今後の提言]24時間対応の診療体制、ダウンサイジング、訪問診療の充実、専門外来の充実、MRIの活用、高齢者医療のサービス充実など

人材確保と育成

介護・リハビリ部門の強化、スタッフ教育の充実、組織体制の見直し、ピアサポーターの導入、データ分析の徹底、ボランティアスタッフの導入など

良質な医療サービスと健全経営

外来機能のサテライト化、経営目標の見える化、アウトリーチ活動の展開、地域ニーズのリサーチの充実、送迎サービスの充実、診療報酬制度の理解、病院施設の開放化など

今年は、診療報酬の改定年であり、改訂内容を見るにつけ精神科医療においては長期入院患者の処遇に関し大きな岐路に立たされているように感じます。

この診療報酬の改定を控えた去る平成27年11月30日、医師を含む各部署の責任者が集い、当院では初めてとなるグループ形式によるディスカッションを行いました。テーマは、➀当法人の魅力と今後の診療体制、➁人材確保と育成、③良質な医療サービスと健全経営の3つで、7つのグループに分かれ、ファシリテーター、書記を決め自由に議論を進めました。テーマ➀においては、「職種間の連携がいい」「人材が豊富」「今後は、認知症患者への訪問診療を始めてはどうか」「睡眠外来などの専門外来を始めてはどうか」「高齢者デイケア、こどもデイケアを始めてはどうか」などの意見が出て、テーマ➁においては、「ピアサポーターの導入はどうか」「教育担当者は、専任としてはどうか」「人事部を置いて、人材を集めてはどうか」などの意見が出て、テーマ➂においては、「サテライトクリニックを開設して、医師が病棟業務に専念できる環境を整えてはどうか」「診療報酬で請求できることは漏らさない努力が必要ではないか」「治療に関するパスが必要ではないか」「地域のニーズのリサーチが必要ではないか」などの意見が出ました。いずれのグループにおいても活発な議論が行われ、日常の診療のなかでは聞くことができない内容ばかりで、非常に有意義な場でありました。今年度、本格的に話し合われる「将来検討委員会」においても、この話し合いを活かしていくことが大切かと思います。また、是非このようなディスカッションを行う場ができればと思います。

文責 井出光吉

第33回 日本青年期精神療法学会総会を終えて 子どもが大人になるということ

2015年11月28日・29日 ホテル ザ・ビー八王子

日本青年期精神療法学会 会長

児童精神科 診療部長 笠原 麻里

2015年11月28~29日に、市内のホテル(ザ・ビー八王子)にて、第33回日本青年期精神療法学会総会(会長:笠原麻里、大会事務局:医療法人財団青溪会駒木野病院)を開催しました。
当学会では、青年期の患者さんを対象に精神療法を行う医師や臨床心理士が、日々実践している治療について時間をかけた発表と討論を行う伝統があります。
今回も120名程の専門家が全国から参加、深く熱い議論が交わされました。大会後、参加者からは当院スタッフのホスピタリティに感謝の言葉が多く寄せられ、駒木野病院らしくおもてなしできたと思っております。これもひとえに、大会半年前から夜遅くまで準備を重ねてきた大会事務局(長沢崇先生、柳橋達彦先生、佐山英美先生、岸本光一先生)と、当日現場を支えてくれた多数のスタッフならびにバックアップいただいた当院のおかげです。
感謝とともにここにご報告させていただきます。

精神医学・行動科学研究所 総会

会場:駒木野病院 グリーンホール

精神医学・行動科学研究所 副所長

慶應義塾大学 文学部 心理学研究室 教授 梅田 聡

精神医学・行動科学研究所の初回総会が、2015年7月6日に開催されました。本研究所は、故加藤元一郎先生の意志と先導により、病院に導入されたMRIを用いて「こころの脳科学」の研究を推進すべく、2013年に設立されました。本総会では、渡辺研究所長にご挨拶いただいた後、「MRIとはどんな装置で、研究や臨床にどのように役立てられるのか」に関する小講演(梅田)を実施しました。続いて各研究グループから、うつ病(菊地先生)、統合失調症(前田先生)、認知症(梅田)、発達障害(柳橋先生)の各テーマに関する成果発表を行いました。質疑応答でも参加者の多くの皆さんから発言がなされ、最後に、菊本院長からも激励の言葉がありました。精神医学に関するMRI研究の拠点として駒木野の名前が認識されるように、今後も所員一同で精力的に活動していく所存です。