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季刊誌 駒木野 No.188

季刊誌 2020.01.31

2020年医療法人財団青溪会新年を迎えて

理事長 菊本 弘次

当院の敷地内にうっすらと積もった雪景色

当院の敷地内にうっすらと積もった雪景色

 新年あけましておめでとうございます。皆様、お健やかな初春をお迎えのことと存じ上げます。旧年中は大変お世話になりました。
 2020年、令和2年になりました。本年3月には医療機関にとっては常に切実で最重要案件である診療報酬改定もありますが、本年7月には東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。昨年、日本の各地では甚大な風水害が相次ぎました。むろん開催期間中だけ穏やかな天候であればよいというわけではありませんが、オリンピックに集うアスリート達が最良のコンディションで大会に臨まれることを願います。それにしても、一流のアスリートのモチベーションの高さと持続力は驚嘆に値します。枚挙すればきりがありませんが、王貞治さんは努力について尋ねられた際、「報われない努力はない、努力が報われないとすれば、それは努力が足りないからだ」と答えたそうです。そこには、圧倒的な自己肯定感が読み取れます。まさに天賦の才です。

 精神科における治療やリハビリテーションにおいて、対象者のモチベーションのありかたが成功の鍵であると私自身は考えています。インフォームドコンセント、シェアードディシジョンメーキング、成功モデル・イメージの提供などなど、いずれもモチベーション形成に有用です。そして、モチベーションを維持し確かなものにするためには、対象者の自尊感情あるいは自己肯定感の回復が不可欠な要件です。
問われるのは、駒木野病院を含めて精神科病院は、精神障害者の自己肯定感に対してどんな影響を与えてきたかです。疾患の特性上そして治療構造上、精神科病院は利用者の自己肯定感を挫くリスクを至る所に抱えています。だからこそ、我々は努力を惜しんではなりません。今年、駒木野病院は新病棟建設を見据えて中期計画を作成します。繊細で脆い利用者の自己肯定感を丁寧に真摯に育むことを根本理念に掲げたいと考えます。

 本年も、皆様のご多幸と、青溪会に対する従前以上のご指導ご理解を心より願います。

特集:冬の食生活-食物繊維について-

栄養科主任 横山美穂

食物繊維の種類と効果について

 食物繊維は腸内の悪玉菌を減少させ、有害物質も減らしてくれる効果があると言われています。加齢やストレス、飲酒、喫煙や薬剤、食生活の偏りなどで、腸内細菌の善玉菌と悪玉菌のバランス(腸内環境)はくずれてしまいます。食生活の面では、ふだんから腸内細菌のエサになるとされる食物繊維を摂取するなど、腸内環境を意識することが健康維持には重要です。

1食物繊維の種類と特性

 食物繊維は大きく分けて水に溶けない「不溶性」と、水に溶ける「水溶性」に分けられます。「不溶性の繊維」はごぼうやセロリなどの野菜に多く含まれています。糸状に長い筋のような構造をしています。一方、「水溶性の繊維」はこんにゃく、海藻などに含まれています。ネバネバやサラサラとした食感です。どちらもヒトの消化酵素では容易に消化できないため、そのまま腸まで到達します。大腸で腸内細菌によって分解されて短鎖脂肪酸(酪酸や酢酸などの有機酸で大腸では重要な機能を持っています)が生成され、肝臓などでエネルギー源となります。食物繊維1gあたり2kcalになるといわれています。

2食物繊維のおもなはたらき

 食物繊維のおもなはたらきは①血糖上昇抑制効果、②便秘、下痢の解消、③大腸がんの予防、④咀嚼回数の増加と唾液分泌促進、⑤コレステロールの排泄、⑥ナトリウムの排泄などがよく知られています。

3サンファイバーとサンファイバーAIについて

 当院で使用している「サンファイバー」はグァー豆を原料に作られる高発酵性水溶性食物繊維で、グァーガム分解物(PHGG)と呼ばれています。PHGGは腸内細菌の発酵・分解によって生成された酪酸が大腸の運動性改善や大腸粘膜の増殖を促進することにより、便秘の場合の排便回数を増やす一方、下痢の場合の便性状を改善し、水様便の回数を減らします。また、「サンファイバーAI」はPHGGにイヌリンという高発酵性食物繊維をプラスしたもので、腸内細菌の発酵・分解によって生成された酢酸が大腸の血流を改善したり大腸の蠕動運動を促進することでより便をやわらかくする効果が期待できます。

☆腸内細菌を増やすためにおすすめの料理☆

オクラとひじきのゆずこしょう和え

オクラとひじきのゆずこしょう和え


〇材料(1人分)
オクラ・・・・・・50g
ひじき(乾燥)・・・3g
白ねぎ・・・・・・10g
白だし・・・・・・5ml
ゆずこしょう・・・お好みで
〇作り方
①オクラは茹でて小口切りにする。
②白ねぎは斜めうす切りにする。
③ひじきは水で戻す。
④白だしとゆずこしょうを混ぜ、オクラ・白ねぎ・ひじきを和える。

おすすめの理由

 オクラには水溶性食物繊維ペクチンと多糖類が多く含まれています。また、ひじきには海藻類のなかでも水溶性食物繊維が多く含まれています。不溶性食物繊維に比べて水溶性食物繊維は腸内細菌による発酵を受けやすく、多くの短鎖脂肪酸をつくります。短鎖脂肪酸は腸内のpHを下げることで腸内が弱酸性となり、悪玉菌を抑制する効果があります。また、発酵食品の納豆や水溶性食物繊維が多く含まれるめかぶなどを加えてもおいしく食べられます。

病棟コンサート

医師 岡野恵里香

 ウクレレとフラのコラボチームで、2019年11月19日、病棟訪問を実施しました。2019年の「こまぎのフェスティバル」が荒天予想で中止という想定外の事態になりましたが、ウクレレとフラというフットワークが身軽な特徴上、病棟訪問という新しい試みを提案して頂きました。今回は、E3病棟が40分、他の5つの病棟は20分弱の披露となりました。自分のウクレレユニット「まゆえり」に、日本を代表するウクレレシンガーソングライター「デイジー☆どぶゆき」先生とフラのAkemi先生が合流し、患者さんやスタッフの皆さんも一緒に歌ったり、体を動かしてもらうことができました。普段医療者として接している時は決して見られないような患者さんたちの笑顔、身のこなしを目のあたりにして、このような音楽療法的な関わりの重要性を感じた1日となりました。ご協力いただいたスタッフの皆さん、ありがとうございました。

ワールドカフェ開催される!

副院長 田亮介

 11月18日の責任者会議の後に、将来検討ワーキンググループが企画し『「あったらいいよね」「これ患者さん(ご利用者)に必要だねよ」「こんなことやりたいね」の会』を開催しました。2023年度の新棟建設に向けたキックオフ的な目的を持つ会として、法人の運営を担っている管理職の皆さんで、多職種で今後の当院の未来やどのような医療をやっていきたいかをワールドカフェ方式で語り合いました。最初は何を議論するのか戸惑いがあるように見受けましたが、そこは法人を引っ張ってくださっている方たちだけあって、あっとう間にグループ内でのディスカッションに入っていかれた姿は驚きでした。2012年にA棟が開棟して、はや8年を迎えようとしています。より質の高い精神科医療と機能的な病院を目指して、来年度立ち上げていく「新棟建設委員会(仮)」に今回の貴重な意見を取り入れながら、具体的な作業に入っていきたいと考えています。

駒木野病院活動報告

看護部宿泊研修を終えて

看護師 及川明日花

 今回の研修は、宿泊研修の予定が台風のため日帰り研修となりました。予定よりも短い時間での研修ではあったものの、良い学びを得ることができました。
 一番最初の駒木野テストでは、駒木野病院の一員として働くにあたり頭に入れておくべき内容が出題されました。しかし、実際に解いてみると空欄が多く、自分が普段から意識して働けていないのだと気づくと同時に今後は、身に付けた状態で働こうと前向きに考える機会となりました。また、患者対応の台詞を直す問題では、模範解答はもちろん、それぞれの解答を聞く事で同期のスタッフが日々どのように患者さんに声掛けをしているのか垣間見ることができ、興味深く感じました。そして、今回の研修ではレクリエーションやカレー作りを通して同期と関わる時間を作っていただけたことで、お互いを知る良いきっかけとなりました。同期の頑張る姿を知ることで更に自分も頑張ろうと感じた研修でした。

DPAT経過報告

医長 一木里江

 DPATとは、災害派遣精神医療チームのことです。災害時の被災者の心理的支援などを目的に、近年体制が整備されてきました。東京都による東京DPAT設立に伴い、当院でも昨年度駒木野DPATが発足しました。現在院内の医師、看護師等十数名のメンバーで活動しています。活動内容は、指定の研修に参加し、災害時の情報収集などを学んでDPAT隊員の資格を取得します。また院内で定期的に委員会を開催し、資機材の準備、通信訓練などを続けています。まだまだ手探りの段階ですが、災害はいつ何時起こるかわかりません。派遣要請があれば迅速に対応し、支援ができるように日々訓練していきたいと思います。

保健所との合同講習会について

アルコール総合医療センター 宮脇真一郎

 令和元年11月8日、八王子保健所との合同でアルコール関連問題啓発習慣イベントの開催をすることができました。今回は地域で身近にアルコール問題に接する機会の多いボランティアスタッフ、民生委員、地域包括支援センターのスタッフの方を対象としました。「アルコール問題と身近な相談窓口~適正飲酒からアルコール依存症まで~」の演題で田副院長が講演を行いました。架空の事例を通してアルコール依存症の診断基準に当てはめる場面があり、終了後アンケートから事例がわかりやすくイメージがついたとの感想が聞かれました。基礎知識を共有することができ、今後、病院を利用してもらうきっかけ作りができたイベントとなりました。

東精協学会に参加して

精神保健福祉士 加藤圭佑

 令和元年10月30日に開催された第33回東京精神科病院学会にてピアサポーターの活動報告をさせて頂きました。ピアサポーター活動は精神領域において現在、注目を浴びている活動の一つです。多くの方にご聴講頂き、積極的な質問が行われ、関心の高さが伺えると同時に日本ではまだまだ普及されていない先進的な取り組みでもあると感じました。新たな年を迎えても駒木野病院での活動や取組みを研鑽し、さらなる挑戦や支援に励んでいきたいと感じています。

青溪会理念

[心のこもった、質の高い精神医療]

【皆様への五つの約束】

  1. 私たちは、地域の保健福祉ネットワークの中で、心の病を治療する役割を果たします。
  2. 私たちは、専門医療機関として医療サービス内容のたゆみない向上に努めます。
  3. 私たちは、安全、快適、さわやかな接遇を心がけ、安らぎと回復の場を提供します。
  4. 私たちは、ご利用者の思いを尊重し、共に力を合わせて障がいを克服します。
  5. 私たちは、患者の皆様が充実した社会生活を取り戻されることを支援します。