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季刊誌 駒木野 No.161

季刊誌 2011.04.11

新年度を迎えて

院長 菊本 弘次

平成23年4月、医療法人財団青溪会 駒木野病院は新たに看護職9名、作業療法士1名、医師4名、ケアワーカー5名に非常勤の臨床心理士2名を迎えることが出来ました。新入職員の皆さん、期待しています。胸を張って利用者に十分なサービスを提供できるよう努力と経験を積み重ねて下さい。八王子高尾という地域社会の一員に仲間入りをしたということも自覚して下さい。入職式後、本館南側の桜を背景にした記念撮影が通例でしたが、今年度は新病棟建築工事の影響で取りやめとしました。残念ですが、桜の木は残ります。その気になれば一年後になるかもしれませんが撮り直すことも可能です。

新棟開設を来年度に控え、今年度は駒木野病院の新しい形を着実に準備していく年度です。統合失調症だけ診ていればという時代は既に過去のものです。昨年度の新規利用者の年齢層では70代以上が4分の1を占め、疾患群では感情障害圏が最多となっています。また児童精神科領域の期待や救急領域におけるアルコール関連疾患への更なる対応が駒木野病院に求められています。精神科病院に限らず医療を取り巻く昨今の状況は大変厳しいものがあります。「じっと動かず嵐の過ぎ去るのを待つ」を是とする考えも一理あるかもしれません。しかし、駒木野病院は、地域のニーズに応えるために新たな分野に取り組んでいきます。また、その取り組みなくして健全な病院経営はあり得ないと考えます。容易な課題ではありませんが、病院が一体となって取り組んでいきましょう。判断に迷うときは、「利用者にとって有益か、地域社会に貢献できているか」を判断基準として下さい。

今般の大震災は東北地方に限ることなく日本という地域社会に計り知れない衝撃を不えています。あらためて、被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。駒木野病院は福島県郡山市に4月6日から2名の職員を震災避難者の支援要員として送り出しました。5月末まで、ほぼ一週間交代で職員を派遣し支援を継続する予定です。主たる支援活動の場は、住むべき地域を奪われた1500人以上の方がたが暮らす避難所です。圧倒的な現状の中で、支援職員は精力的に着実に活動されています。丌安や心配は当然ある中で、支援要員として手を挙げて頂いた職員の皆様、また、支援を支えている全ての部署、職員に敬意を表し感謝します。被災された皆様が、一日でも早く、新たな生活を取り戻し、豊かな地域社会の一員としてご活躍される日が訪れることを祈念いたします。

 

KOMAGINO conference

きのこエスポワール病院から学ぶこと

志水祥介(文責)見学同行:佐藤千恵子 山本由美 村松陽子

冒頭にあたり、今回の東日本大震災により尊い命を失った方々に心からご冥福を祈ります。そして現在も被災地で毎日懸命に生活されている方々には、一日も早く平静な生活がおくれるよう心からお祈りいたします。

「今、自分にできることは何か?」今回、皆が真剣に考えたことでしょう。被災者のため、被災地の復興のために「今、自分にできることは何か?」と。私自身はメーリングを使って震災後の必要な医療情報を細々ですが提供することを行っています。私の住まいの周囲では多くの有志が時間をおしまず懸命に物資の調達・配給の準備をしたり、原発廃止に対して真剣に活動を始めた方もいます。

この「今、自分にできることは何か?」は医療にとっても最も重要なことです。医療現場では自分達の「進歩」が求められます。今、自分にできることを考え、今日の医療よりも一歩進んだ明日の医療を行うことです。自分達の「進歩」がなければ、医療者としては役者丌足です。今、自分にできる医療を発揮するには、常に進歩が必要であり、それがたとえ小さなものであっても、十分に貢献ができるはずです。

『きのこエスポアール病院』の見学目的はこの「進歩」にあります。認知症を診るというのは「病気(認知症)そのもの」を診るのではなく、「高齢者という人間自身」を診るということです。そこを見失うと認知症診療は単なる「姥捨て医療」になります。一人の高齢者を首尾よく介護施設や慢性期病院に入れることがゴールになってしまうのです。しかし、そんな医療を認知症診療とは当然呼べません。本来の原点を当スタッフと共有し、再認識していくことが見学の大きな目的でした。それは病院の「進歩」にもつながります。

『きのこエスポアール病院』はユニット型ケアを実践しています。患者さんをユニット毎に区分し、病院色を消し、まるで自分達の家の中にいるような環境をしつらえます。スタッフは私服にエプロンをつけ、ユニットごとに分かれた患者さんの中に入って周囲に目を配りながらケアをします。日々のスケジュールもスタッフ主体ではなく、患者さんの希望に沿うように工夫をしています。患者さんとスタッフの平穏な姿のなかに、私は和音を感じました。それは実際の音ではありません、空間にただよう人間同士の調和です。

誰しも入院をしたくて来たわけでもなく、そんな中で病院主体の環境は認知症の患者さんをどういう気持ちにさせるか容易に想像がつきます。大声や丌穏な行動は周囲の環境や私たちの言葉使い・ふるまいにも起因しますし、「ここの環境は自分にとってふさわしくない」というメッセージでもあります。表面的な医学知識、薬、拘束という手段のみを優先していくのでは落とし穴にすっかりはまります。当スタッフの経験値は十分にあります。あとは、どのように「進歩」していくかであり、そのためには本質をついた病院の見学をすることが大変重要なのです。そこで得たものを自分たちの中に落とし込み、高めていくことが「進歩」につながります。骨の折れることですが、そこを避けていくと必ず大切なものを見失い、自分たちが何のために働いているかさえ曇っていきます。

自分たちが目覚めた医療を実践することで、私たちの進歩が病院のみならず社会全体に還元されていくことを忘れないようにしたいです。

 

スーパーアルプス 第61回全関東八王子夢街道駅伝競走大会

駒木野病院陸上部 疾走!!

南3病棟 宮脇 真一郎

駒木野病院の陸上部は発足して7年目になります。毎年、2月に行われる八王子夢駅伝は部にとって、その年のスタートを感じる大会です。今年も無事、男女各1チームがタスキを繋ぐことができました。

毎年恒例という大会は不思議なもので、近づいてくると何となく体がウズウズしてきて、自分に走らなければという気にさせます。メンバーも同じ気持ちなのか、毎週火曜日・水曜日の練習の参加率が上がります。

ここ最近のジョギングブームも重なって駅伝の参加チームは550チームにもなっています。あっという間に終わってしまうのですが、「ちゃんとタスキが繋がるかな・・・」「ちゃんと走りきれるかな・・・」と不安は尽きません。しかし、沿道の「駒木野病院がんばれ!」という声援に後押しされ、毎年、何とかタスキが繋げています。

この原稿を依頼されたのは東日本大震災後のことでした。今年は日本にとって試練の年です。色々な絆が試される年であると思っています。何かすぐにできるわけではありませんが、出会った人を大切にし、厳しい状況を乗り越えていければと思います。

そして、来年の2月、また元気に八王子夢駅伝に参加できれば、最高に幸せだと思います。

ランナー紹介

宮脇真一郎

真嶋信二

長尾一也(建築士)

桒野勝之(永生病院)

小林あゆみ

後藤有紀

佐保今日子

岩下友美

 

平成22年度 医療実績

平成22年度の医療実績としましては、入院数990件及び退院数1001件となり、前年度を上回りました。

平均在院日数も167日と在院期間の短期化が進んでおります。

また外来においても、前年度に比べて患者数及び新規患者数がともに増加(H21年度の新規患者数の上昇は、閉院したみなみの森クリニックの患者を受け入れた為)しております。

新規患者の疾病分類のグラフでは、F3:気分(感情)障害とF0:認知症及び器質性精神障害で全体の45%を占めており、当院の診療機能の特徴を表しています。

 

東日本大震災 義援金のご報告

この度の震災において、職員の皆様から大変多くの義援金が寄せられた事をご報告させていただきます。寄せられた義援金は、日本赤十字社を通じて被災された方々の支援に活用させていただきました。職員の皆様の暖かい気持ちに感謝いたします。これからも長期にわたり支援をしていきたいと考えております。

義援金

¥169,744-

(2011/4/1現在)

 

編集後記

このたびの東日本大震災で被災された方々、そのご家族さまに心よりお見舞い申しあげます。

過去にない広域にわたる震災と福島原発事故も重なり、物資の不足・電車の運休・計画停電と日本経済に大きな打撃を不えています。しかしながら、世界中から大きな支援と日本国民の秩序正しさと我慢強さが称賛されました。一日も早く復興できるよう、私達一人一人できることからはじめましょう。がんばろう ニッポン。 ( I ・ K )